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3.242021
ブーツメーカーフセとEGO7(乗馬ブーツ)のファスナー交換
緋色舘の西野です。
やっと気温も上がってきて桜の花もチラホラと。
今年は開花も早いということで既に満開というところもあるようですね。
フセブーツのファスナー交換
乗馬ブーツの修理に関しては緋色舘の仕事の中でもひとつの柱のようななものですが、
殊更気を付けていることがいくつかあります。
ブーツの故障は大きく分けて以下の二種類があります。
- ファスナーや靴底のように消耗する部分の交換修理(使用している以上必ず劣化していく部分の取替)
- 甲や筒、インナーなどの本体に属する部分の故障の修復(壊れるとブーツの存続に大きく差し障る)
簡単に例えるなら
スマートフォンの充電が上手くいかなくて使えなくなったとします。
USBケーブルの不良なら消耗品として交換すればよいですが、本体の故障が原因ならちょっと焦りますよね。
今回のテーマは1の「消耗品」部分の修理についてですが
- 出来るだけ原型修復(リストア/復元)するようにつとめ、さらに次の故障(消耗)時に同様の状態に戻せるよう備える。
- 同様に修理の再現性を重視するため余分な変更を行わない。
- 必ずブーツの運動性能を損なわない配慮をする。
ブーツ製作者はユーザーに快適に使用出来るよう、色々な特徴(オリジナリティ)を盛り込んでいます。なので台無しにしないよう、通常この3点を守って修理に臨みます。
ブーツメーカーフセ(現ツシマブーツファクトリー)の乗馬ブーツ。
ファスナーの故障ということでコレを取り換えていきます。
フセブーツの特徴として、ファスナーを取り外すとくるぶし部分より上の筒と、下の靴部分に構成が分かれます。
これは一般的なイタリア製などのブーツには無い構造ですね。
このような構造になっているのは消耗品部分のファスナー交換が前提として考えられている結果だと思います。
まず筒部分に新しいファスナーを縫製します。
ファスナーと同時にライニングも縫い込むので、針が落ちる位置が狂うと支障が出ます。
これはシビアなものなので、失敗すると次の工程には進めません。
細革を元の位置に戻します 靴部分と筒を再縫製します 修理後にライニングから見たミシン目
さしたる理由がない限り、同じ位置に同じ縫製を入れていくことで元のブーツの機能性が再現されます。
これは当たり前のことのように思えるかもしれませんが、基礎や基本的なやり方に精通していて、どのような構成を持つブーツにもその方法に基づいて実践できる実力が要求されます。
最後に拍車台を取り付けて 手入れをして完成! 基本を守れば筒のフォルムがキレイに出て当たり前
修理完了後にオーナー様にお送りするとすぐにお電話を頂き、
「見違えるほどキレイになって感激しました」とおっしゃって頂きました。
乗馬ブーツは足を守るための物なので、ユーザー様の安全を守るという意味でも気を抜かずに作業していきます。
EGO7のファスナー交換
内国産のブーツファクトリーフセや堤乗馬靴店などの高品質なブーツとはまた違う良さがある
EGO7の乗馬ブーツ。
乗馬ブーツの「ロールスロイス」とも形容されるFranco Tucci(フランコ・ツッチ)のセカンドラインで高級クラスのライディングブーツです。
修理前の画像
典型的なバックジップ仕様ですがカカトを保護するクッション型の革風防(ファスナーガード)が付いているのが特徴。
ライニングはサイドゴアパネルのゴムで二分割されている。
この構成を崩さずファスナーを交換します。
ブーツにとって体重を支える最重要部位のひとつであるヒール。大事な部分なので本体にがっちりと固定してあります。このような構造のファスナーを交換するときに、このヒールブロックを本体から外してファスナーを抜き取り交換する方法を取った修理がありますが、最悪の結果を招きます。
上に述べたようにファスナーは消耗品ですから使用期間に応じて何度か交換する必要があります。
そのたびにヒール固定の釘を抜いて外していれば簡単にグラグラになります。
家をリフォームする時に、柱を全部抜いてリフォームしようとするとたぶん倒壊します。それと同じことです。
地面を踏んでいるヒールリフトは摩耗していますので、この部分は後程交換します。
修理後 このベロもヒールの固定も外さずに ファスナーだけを交換します。 インナーの縫い目も定位置に過不足なく止めます
使用ファスナーは純正と同じYKK No,10 最後にヒールリフトを打ち直して完了
乗馬ブーツのファスナー交換は消耗品の交換です。
基本ブーツに余計なストレスを与えずに元に戻すという作業であるため、
ひと目見てキレイになったと思ってもらえるユーザビリティー(ユーザーの立場に立って作業を行う)が重要だと考えます。
では本日は以上です。
フセブーツ(ツシマブーツファクトリー)とEGO7のファスナー交換修理でした!